【今回のトピックス】
第53回 日本癌治療学会 “がんと生きる” :
~ がん免疫療法 抗PD-1抗体の動向
京都で開催の日本癌治療学会に参加した弊社Oncology担当者が注目したトピックをお送りします。
木々が色づき始めた京都は、まさに観光シーズンで、街は多くの旅行客で賑わっておりました。学会では、今後のがん治療への期待が高まる研究発表で盛り上がりを見せていましたが、その中でやはり今回も免疫療法が注目を集めていました。
抗PD-1抗体-胃がん
今回の学会のメインテーマは「がんと生きる」であり、日本では2人に1人ががんに罹患するといった統計が示すように、好ましくはないのですが、私達に身近な病気の一つと言えるかと思います。長年多くの人達の研究により、がんに関する多くの事が分かってきて治療の成績も向上してきていますが、今もなお不明なことが残されているのが現状だと思います。
今回の学会では、あらためて基礎研究の重要さ、その知見を活かした臨床応用、臨床から基礎へのフィードバックといった絶え間ないサイクルが、「がんと生きる」ことに繋がると認識させられました。
さて、新しいがん治療の柱になると期待される免疫療法には今回も多くの注目が集まりました。 ご存じのとおり、日本でもCTLA-4、PD-1といった免疫チェックポイント阻害剤は既にメラノーマで使われています。 これまでの治療薬と異なり、治療により変化した腫瘍抗原にも対応するといった免疫チェックポイント阻害剤は、Responderには長期生存が得られるという特徴を持っています。 但し、抗PD-1抗体薬剤を例にとっても、Non-Responderがいるのも事実で、それを見極めるバイオマーカー、そしてNon-Responderへの治療に関しては、引き続き研究が行われており、 バイオマーカーの同定、他の免疫療法・分子標的薬との併用結果が待たれます。また、免疫チェックポイント以外にも、今回の学会でもCAR/TCRといった遺伝子改変T細胞、 制御性T細胞(Treg)の抑制、ワクチンといった多くの免疫療法の研究発表もされており、今後も免疫療法からは多くの新しい発見が出てくると感じました。
また、今回、胃癌に対するPembrolizumabのKEYNOTE-012 (第Ib相) 試験の結果の発表がありましたが、39名が対象となるものの、ほぼ3rd lineの患者が対象となっていたなかで、 1st lineでのOSの結果と同程度のmOS 11.4ヶ月を示したことは驚異的な結果で、これからのPembrolizumabの胃がんでの開発に期待が持てる結果でありました。 なお、Pembrolizumabは、胃がんでの先駆け審査指定も10月27日に得ています。
胃がんは、今年ラムシルマブなど新薬も上市されましたが、依然、進行再発ではアンメットメディカルニーズの高いがんであり、 また、今年のASCOでDung T.Le氏の発表にもあった、抗PD-1抗体の効果予測因子の可能性が示唆されたDNAのMMR(mismatch Repair) 欠損が多いがんでもあります。 KEYNOTE-012では、Pembrolizumabの単剤での第Ib相の試験になりますが、今後、分子標的薬やPD-1とは異なる免疫療法との併用試験も行われていくかと思いますが、 これからも本治療のバイオマーカー、併用療法の結果といった点には注目していきたいと思います。
■ 編集後記 ■
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