厚生労働省 科学研究費補助金 がん対策推進総合研究事業における活動第2期 2020年~2023年

研究テーマ:

「国際比較可能ながん登録データの精度管理および他の統計を併用したがん対策への効果的活用の研究」

研究代表者:

松田 智大(国立がん研究センターがん対策情報センターがん登録センター)

サイニクスの分担研究テーマ

『医療情報収集・提供の仕組みの国際比較』

第6回調査会テーマ:「希少がんの疫学と臨床研究の進め方

講演1

「希少がんの国際共同研究の進め方 疫学から臨床研究へ」

松田 智大 (国立がん研究センター がん対策研究所 国際政策研究部 中央病院 アジア連携推進室 企画戦略局 国際戦略室がん登録センター)


効果的ながん対策のためには、その実態を把握し、網羅的な高精度データを整備することが、疫学分野での長年の課題であった。希少がんについては、診断や治療方法がないだけでなく、比較可能な統計値がないことが更に深刻な課題となっていた。網羅的ながん登録のデータを用い、国際標準の分類によって希少がんを捉える試みがRARECAREnet Asiaというプロジェクトの一環として開始され、韓国や台湾、タイ、マレーシアといった国と共同で、アジアにおける希少がんの実態把握が進み、情報提供がされている。同様に臨床試験においても、国立がん研究センター中央病院が進めるATLASの枠組で、MASTERKEY Asiaという希少がんを対象にしたアジアでの国際共同臨床研究が立ち上がった。データを介して、疫学分野から臨床研究の分野に橋渡しがされ、国と分野のボーダーを越えたがん研究が始まりつつある現状を紹介する。

サイニクス がん オンコロジー がん登録  がん統計

講演2

「住民ベースがん登録データに基づく希少がんの疫学」

杉山 裕美(公益財団法人 放射線影響研究所 疫学部)


がんの罹患統計を計測するには、がん登録という仕組みの中で漏れなく届け出され、正確な診断情報がデータベースに登録される必要がある。さらに、希少がんの罹患率計測は、発生部位だけでなく組織型の情報を用いて、一つ一つのがんに分類していく必要がある。日本における住民ベースがん登録データは、地域がん登録時代からの精度向上の努力と、全国がん登録の法制化により、国際的にも良精度なデータとして整ってきた。2011年から2018年までに蓄積された、約570万件のがん登録データをRARECAREnet listで18種類のFamily、68種類のTier-1のがん、216種類のTier-2のがんに分類し、希少がんを含めたすべてのがんについて罹患率、その年齢分布や、都道府県による特徴を紹介する。また希少がん罹患率は増えているのか減っているのか、罹患率の時間変化を検討する。

実施日:2022年10月26日
参加者:製薬企業担当者176名(40社)
報告書:『医療情報収集・提供の仕組みの国際比較』

講演の様子


第5回調査会テーマ:「がん統計の創薬への活用

講演1

「日本のがん登録 ~ 現状と今後の課題」

松田 智大 (国立がん研究センター がん対策研究所 国際政策研究部 中央病院 アジア連携推進室 企画戦略局 国際戦略室がん登録センター)


2016年に全国がん登録が開始され5年。現在までに2018年までの3年分データが公表されている。本勉強会では全国がん登録における現状と今後の展望について紹介する。

講演2

「がん検診受診率とがん罹患率」

松坂 方士(弘前大学医学部附属病院 臨床試験管理センター准教授・副センター長(兼)医療情報部 副部長)


がん検診は、症状出現前のがん発見を通してがん死亡率を低下させる取り組みである。本来、がん検診自体はがん発症に影響しない。ただし、がん検診を開始すると「第一ラウンド効果」や「第二ラウンドのへこみ」と呼ばれるがん罹患率の見かけ上の変化が観察される。前がん病変の治療により、がん罹患率が低下する可能性があるが、過剰診断により、がん罹患率が上昇する可能性もある。

「製薬企業が求めるがん統計 第1回~5回調査結果報告」

木塚 陽子(サイニクス株式会社)

講演3

「希少がんの疫学」

杉山 裕美(公益財団法人 放射線影響研究所 疫学部)


日本のがん登録データを用いて、がんデータを詳細に分類し、希少がんを含めがん種別に罹患率の年齢分布や地域特性を検討したので紹介する。

講演4

「希少がんプラットフォーム研究とアジアへの展開(MASTER KEY Asia)」

大熊 ひとみ(国立がん研究センター中央病院 国際開発部門 研究企画室 室長)


患者数が少なく、治療開発が困難とされる、希少がんを対象に、研究開発およびゲノム医療を推進する産学共同のレジストリ研究をベースとしたプラットフォーム「MASTER KEYプロジェクト」が2017年5月より開始された。2021年11月現在、国内患者登録数が2000例を突破し、19の臨床試験が実施される中、アジアへ展開し国際連携を基盤として、希少がんの遺伝子情報、治療の詳細、予後などを含むデータを収集し、国際共同(臨床)試験につなげることで、希少がんの治療開発とアジア地域でのがんゲノム医療の加速化を目指す。

実施日:2022年2月3日
参加者:製薬企業担当者333名(48社)
報告書:『医療情報収集・提供の仕組みの国際比較』

皆様からのご質問集

お申込み時、講演中にいただいた様々なご質問にパネリストが回答しました。是非、講演の様子をご視聴ください。

講演1「日本のがん登録 ~ 現状と今後の課題」

Q. 全国がん登録の最新版が更新される時期はこの3年間では特に決まっていませんでしたが、今後の更新時期に関するご予定はありますか。
Q. データ集積の状況とデータ解析方法について教えてください。
Q. マイナンバーと紐づけてデータ化してほしいです。
Q. どのくらいの割合でがん情報が登録されているか教えてください。

講演3「希少がんの疫学」

Q. 希少がんに対する新薬が創製されると治療十分でない治療対象患者への治療のアプローチはどのようになると予測されますか。
Q. 全国がん登録では、がん種に対してどこまで詳細に記録をとっているのでしょうか。希少がんも登録されているけれど、集計データとしては公表されていないのですか。
Q. 血液腫瘍も対象とされるのでしょうか。
Q. 組織型ごとの希少がんの特徴や疫学についてどこまで明らかになっていますか。

講演2「がん検診受診率とがん罹患率」

Q. 職域のがん検診受診率の精査が重要と考えますが統計に生かされていないと感じております。現状での課題と改善策を教えてください。
Q. がん検診受診率を上げるために製薬会社ができることはどんなことがあるでしょうか。
Q. データ蓄積の状況とデータ解析方法について教えてください。
Q. COVID-19の影響で今後どのような変化が考えられるでしょうか。発見が遅くなることで後期ステージの患者さんが増える懸念はありますか。
Q. 胃透視による検診は見直しの必要はないでしょうか。
Q. がん検診受診率とがん罹患率の関係を教えてください。
Q. 日本のがん検診受診率が欧米と比べ低いように見受けられますが、その理由を教えてください。

講演4「希少がんプラットフォーム研究とアジアへの展開(MASTER KEY Asia)」

Q. 中国や韓国とどのように協力していくのか教えてください。
Q. 血液腫瘍も今後対象とされるのでしょうか。
Q. アジア諸国での希少がんの臨床開発の促進についてどのような活動をしていますか。
Q. 未承認薬・適応外薬のスキームの利用実績・予定はありますか。
Q. MASTER KEY プロジェクトのデータベースは、参画企業以外は活用できないでしょうか。
Q. MASTER KEY プロジェクトに参加するためにはどうしたらよろしいでしょうか。
Q. アジア展開の先に、欧米展開の可能性はございますでしょうか。
Q.  MASTER KEY では、診断パネル、キットの開発も平行して研究されているのでしょうか。
Q.  MASTER KEY と全国がん登録は連携されていますでしょうか。連携されていない場合は、理由をお聞かせください。また、参加施設以外にいる患者さんへのリーチもされているのでしょうか。
Q. 遺伝子バネルは血液腫瘍も含まれますか。
Q. MASTER KEY プロジェクト枠内でも、日本人のPhase1が終わっていない薬剤で治験を行いたいときは、やはり日本人だけを規定数集めて安全性忍容性を確認してからでしょうか。

講演の様子


第4回調査会テーマ:「がん統計の創薬への活用」

講演1

「がん登録情報の整理および活用について」

松田 智大 (国立がんセンター がん対策情報センター がん登録センター)

講演2

「C-CATに集積されるがん遺伝子パネル検査・診療データの利活用開始にあたり」

河野 隆志(国立がん研究センター がんゲノム情報管理センター(C-CAT) 情報利活用戦略室)

講演3

「希少がんプラットフォーム試験とアジアへの展開(MASTER KEY Asia)」

中村 健一(国立がん研究センター中央病院 臨床研究支援部門 研究企画推進部/JCOG運営事務局)

実施日:2020年12月9日
参加者:製薬企業担当者283名(50社)
報告書:『医療情報収集・提供の仕組みの国際比較』

講演の様子