【今回のトピックス】
- 2015年1月1日施行「難病法」を読み解く
- 米国精神医学会診断基準(The Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)の改訂について:
DSM – IVとDSM – Vの違い
1998年創設より、サイニクス株式会社では一貫して製薬企業における開発・マーケティング戦略立案のためのSecondary Market Researchやデータ分析、コンサルティングを行ってまいりました。
今後、皆様の業務にお役に立つような情報を不定期ながら、医薬品向けメールマガジンとして配信してまいります。事業性評価の基礎となる”患者数”に関連する「疫学」を、より身近に感じていただけるような内容をお届けしてまいります。
2015年1月1日施行「難病法」を読み解く
2015年1月より難病法が改正されました。医薬品企業にとっての影響は、何といっても医療費助成の対象疾患が増えることによる治療機会の拡大です。この政策に対しどのようなビジネスチャンスがあり、また患者さんのQOLの改善に貢献できるのか、はたまた参入すべきか?採算性は?など検討すべきポイントは尽きないと思われます。難病法の大きなポイントは、以下に挙げられる3点です:
【Point】
★Point 1:助成の対象疾患が拡大
どの疾患が今後助成対象になるのか?
助成対象疾患が56疾患から113疾患に拡大
- 2015年1月1日より113疾患が新たに医療費助成の対象に
- 2015年2月に、厚生労働省厚生科学審議会・疾病対策部会の指定難病検討委員会で新たに43疾病が追加され、2015年7月にも医療費助成が開始される見込み
- 残る100疾病程度は、2015年夏からを目指して検討中
小児慢性特定疾病の医療費助成も施行
- 2014年度時点で対象となっている514疾病が整理・細分化され598疾病に。さらに107疾病を追加し、計705疾病に拡大予定
★Point 2:難病医療拠点病院の整備
医療機関に辿りつけていなかった患者が受診する機会が増える
疾病に対する研究が活発化する可能性
★Point 3:難病患者データベースの構築
難病指定医によるより正確な診断を目指す
患者登録事業を全国規模で実施し、難病患者データベースが構築される
- 一元的なデータの管理 - データの質及び入力率の向上
- 経年的なデータの蓄積
参考ウェブサイト:
・厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/
※厚生科学審議会(疾病対策部会指定難病検討委員会)資料など
・小児慢性特定疾病情報センター http://www.shouman.jp/
・難病情報センター http://www.nanbyou.or.jp/entry/1439
まとめ(サイニクスの見解)
疾病対策部会の資料によると、助成対象患者数は成人で約78万人(平成23年度)から約150万人(平成27年度試算値)に増える見込みです。 その患者さんに対する医療費は、総事業費として約1,190億円(平成23年度実績)から4年後には1.5倍の約1,820億円(平成27年度試算値)に増加するといわれています。 また、薬事・食品衛生審議会薬事分科会の報告によると、希少疾病用医薬品の指定基準(オーファン対象)も指定難病なら患者5万人以上でも対象となる見込みです。 難病対策に予算が投入され、市場規模は拡大することが予想されます。対策がめまぐるしく変化している難病対策。その変化を見過ごさず、戦略を検討することが重要です。 3月5日(木)に開催するセミナーでは、この難病・希少疾患に関連する様々なトピックを外部のご講演者をお招きし解説いただく予定です。
米国精神医学会診断基準(The Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)の改訂について:DSM – IVとDSM – Vの違い
2013年5月に米国精神医学会よりDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(DSM)の改訂版DSM – IVが公表されました。 診断基準の改定は、患者数の増減に大きく影響します。 2014年に弊社が提供する疫学データベース「Epi Database®」でデータ更新を行った疾患のうち4疾患における主な改定内容をご紹介します。 詳細は、参考ウェブサイトをご参照下さい。
DSM – Vによる疫学調査が実施されて初めて、診断基準変更のインパクトが把握できます。
今回のトピックである診断基準の変更とは少しずれますが、東京大学大学院医学系研究科の川上憲人先生は、 「ストレスと健康・全国調査2013(世界精神保健日本調査セカンド2013)」の関東地方調査の結果について、 関東地方の調査であり、調査人数も少ないとしながらも「この10年で日本における心の不調はあまり増加していませんでした。 一方、医師にかかる人は2倍くらいに増えていました。」と示唆しています。 日本では、文化的な背景から、長年、精神疾患による受診に一定のバリアがありましたが、少しずつ治療機会が増えているのかもしれません。 今後の動きに注目してまいります。
■ 編集後記 ■
第1回メルマガはいかがでしたでしょうか?
ご意見、ご質問等ございましたら、お気軽にご連絡ください。
また、今後取り上げてほしい内容等ございましたら、ぜひご連絡ください。