新たな承認薬が期待される多発性骨髄腫に注目~第78回 日本血液学会学術大会より~

【今回のトピックス】

第78回 日本血液学会学術大会

だんだんと秋も深まる季節となりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
今回、サイニクスは10月13日~15日(横浜)で行われた 日本血液学会に参加し、日本におけるオンコロジー治療の現状と今後の動向について情報収集をして参りました。 本ニュースレターでも度々取り上げてきた“免疫療法”は、皆様ご存じの通り、固形がんでなく血液においても開発は進んでおり、 免疫療法の新しい技術・CAR/TCR遺伝子改変T細胞においては、第三世代の開発も行われていて、臨床試験の結果はもちろん、 これら新しい技術の進展にも益々目が離せない領域となっております。
そういった中、今回のニュースレターでは、 近年、新規薬剤が次々と承認され、今後も新たな承認薬が期待される多発性骨髄腫に注目を致しました。

多発性骨髄腫の薬物治療 『5 ⇒ 7 そして9』

『5 ⇒ 7 そして9』。これは学会1日目の教育セッションで挙げられた日本における多発性骨髄腫の現在の新規治療薬、 そして今後承認が期待される薬剤を加えた計9剤を示した数字になります。
日本における多発性骨髄腫の新規薬剤の歴史は 2006年の再発・多発性骨髄腫を対象としたVelcadeの承認にはじまり、今年7月にはKyprolisが承認され、現在7剤に達しました。 本領域における開発は近年著しい進展を遂げ、昨年2剤/今年1剤が承認され、近く2剤の承認が期待される領域となっております。

< 現在までの主な承認状況 >
2006年 Velcade / 2008年 Thaled / 2010年 Revlimid
2015年 Pomalyst / 2015年 Farydak / 2015年 Empliciti / 2016年 Kyprolis

新規治療オプションがもたらす患者セグメント

本学会の多発性骨髄腫のセッションで紹介された患者の一言です。
『どうしても東京オリンピックはこの目で見たい!』
『入院やそんなに多く通院するなら治療はもういいですよ・・・』

新しい薬剤の登場、バイオマーカー探索及び個別化医療の進展は、患者の生存率とQOLの向上に繋がっているのは学会での臨床報告が示す通りですが、 前述の通り、多発性骨髄腫では今後も薬剤の開発/新規治療オプションの追加が期待されており、更に患者・家族の目線に立ったより発展型の個別化医療が もたらされると考えます。

例えば、ご存じの通り、多発性骨髄腫は高齢者に多いがんで、罹患患者全体の約80%が65歳以上の高齢者*1となります。 本学会でも話題となり、近い将来日本でも承認されると思われるプロテアソーム阻害剤・ixazomib (欧米・承認済)は、現在の標準治療薬・プロテアソーム阻害剤の “経口薬”といったこともあり、通院が困難な高齢者、地理的に通院が難しい患者に対して大きな利便性をもたらすと考えられます。 利便性は効果、副作用と合わせて薬剤評価の重要な要素の一つですが、治療オプションが多様になることで、マーケット・セグメントを知るうえで、 より一層「ゲノム的なセグメント」そして「人口動態変数・地理的変数・心理的変数・行動変数」など複数要素を絡めた患者セグメントを整理分析することが 重要になるのではないかと考えます。

また、本学会では、現在の治療を反映すべく多発性骨髄腫の診療指針(4版)にて、新たに3rd line治療の追加記載があった旨、 話に挙がりました。CancerMPact® *2 のがん治療市場調査レポート(2015年12月調査)によると、2015年5月発売のPomalystが僅か約半年で3rd line患者の約30%で 使用された結果となっておりました。本年も引き続き調査を行い、結果が来年3月頃にレポート発刊される予定ですが、新薬の動向から益々目が離せません。

私達サイニクスは、これからも引き続き、がん登録をはじめとする統計データ、現在の治療動向、開発動向の情報収集・分析に力を入れ、 これからも皆様のお役に立てるよう努めて参ります。

*1 CancerMPact® – Patient Metrics Japan (多発性骨髄腫)
*2 CancerMPact® とは: 戦略立案の基礎データとして、市場規模、治療動向、将来の競合状況を包括的にサポートするオンコロジー統合データベースで、以下3つのモジュールから構成されます。

Patient Metrics

再発率を加味した疫学患者数。ステージ別、ライン別の患者数を提供。人口構成やがんの罹患率トレンドを加味して2050年までの患者数を予測。

Treatment Architecture

市場調査を基にした現在の治療動向レポート。治療の全体像をとらえた上で薬物療法の使用割合、レジメン別シェア、平均治療期間、ライン移行率など、市場を把握するために必要な様々な要素をレポート内にて提供。

Future Trends and Insights

将来の治療動向レポート。開発中の注目薬剤の臨床試験情報とともにアナリストの分析結果などを提供。

日本における血液がんKOL選定サービスのご紹介

弊社・サイニクスは、約15年に渡り日本のオンコロジー領域の市場性分析を行ってきた経験を活かし、日本におけるKOL選定サービスを提供しています。 本サービスは、医師の学会活動、研究活動、ガイドラインより対象疾患及び領域での影響力をデータベース化し、最終的にそれらをスコアリングする事で、 社内部門間にて、開発段階から上市後までご活用頂ける情報プラットフォームを提供するサービスとなります。

■ 編集後記 ■

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