AML:ケモフリーに向けて / MM:標準治療への大きな影響 ~ 米国血液学会(ASH)2018より ~

第60回米国血液学会(American Society of Hematology)が2018年12月1日~4日米国San Diegoで開催されました。今回のSynix Oncology Newsletterでは、参加した弊社スタッフの注目トピックをお届けします。

急性骨髄性白血病

  • 急性骨髄性白血病「7+3」療法を超えて個別化医療へ
  • Venclextaに高い期待 高齢AMLへ新たな治療選択
  • 来院~遺伝変異解析~治療は1週間 Beat AMLプログラムの実績

多発性骨髄腫

  • 1st line標準治療に大きな影響を与える新たな発表
  • 早期奏功を示したNinlaro, Darzalex含む4剤併用
  • 1st lineで長期の有効性、新たな併用療法で有望な結果を示したDarzalex

急性骨髄性白血病は「7+3」療法を超えて個別化医療の時代へ

ASH2018開催直前にFLT3阻害剤XOSPATA (gilteritinib)、BCR-2阻害剤VENCLEXTA (venetoclax)が米国で承認され、本年のASHでも特に盛り上がりを見せていたAML。2017年以降米国ではFLT3阻害剤、BCR-2阻害剤の他にSMO阻害剤、IDH1/2阻害剤等多くの薬剤が承認され、AMLも個別化医療の時代をむかえようとしています。今回のASH2018では、「7+3」療法に代わる新薬の選択方法について多く議論が交わされていました。

米国におけるAMLの標的別の開発動向試験(一部)

Data Source : CancerLandscape (2018年12月現在) 開発上位一部

Venclextaに高い期待 高齢AMLへ新しい治療選択

現在、強力な寛解導入療法の対象となる若年AML群の初回治療は、「7+3」療法などアントラサイクリンとシタラビンの併用療法が主流であり、大量投与による副作用は強いものの高い寛解率が期待できます。しかし強力な寛解導入療法が実施できない高齢AML群における治療は、azactidine, decitabine、LODAC(低用量cytarabine)等の単剤療法が標準治療となっています。Treatment Architectureの調査結果では、AML全体の約30~40%が高齢AML群となり、アンメットニーズの高い領域となっています。

今回のASHでは、高齢AMLの初回治療で承認されたBCL-2阻害剤Venclexta (venetoclax, Roch / Abbvie)に大きな注目が集まっていました。米国でVeneclextaは、75歳以上又は強力な寛解導入療法が適応とならない初発のAMLに対し、azactidine, decitabineまたはLoDAC(低用量citarabine)との併用で承認されています。安全性・有効性を評価したM14-358試験およびM14-387 試験結果は、本年の米国腫瘍学会(ASCO)でCR改善およびOSの延長が報告されていますが、ASHではその後の長期フォローアップデータからの有効性を示した報告がありました。またそれ以外では、SMO阻害剤Daurismo (glasdegib, Pfizer)がLoDAC併用で承認されており、日本においても今後高齢AML領域における新薬の使用動向が注目されます。

来院~遺伝変異解析~治療は1週間 Beat AML®プログラムの実績

AML患者を対象とした遺伝子検査~治療プロセスの効率化を目指したBeat AML® Master 試験より経過報告がありました。米国の白血病リンパ腫協会(The Leukemia & Lymphoma Society)が主導する本試験は、診断後7日以内に遺伝子変異解析を行い、遺伝子変異に応じた治療を実施するプログラムです。2016年の試験開始以降356人のAML患者が登録され、うち273人が7日以内に治療開始しています。日本では未承認の薬剤も多く、欧米と比較して治療選択肢が少ない現状にありますが、新規作用機序を持つ薬剤の開発が多く進んでいます。AMLをはじめ個別化医療が進む今日のがん治療では、新規薬剤の承認と並行して個別化医療を早期に実施するコンソーシアムの確立、NGS検査の保険適応に期待が増々高まります。

多発性骨髄腫 1st line標準治療に大きな影響を与える新たな発表

近年多くの新薬が開発され、劇的に治療が進化している多発性骨髄腫領域では、今年の米国腫瘍学会(ASCO)から引き続き、ASHでもFollow up試験を含む多くの結果が示されました。

Phase 3 ALCYONE試験 [1st line移植非適応 VMP±Darzalex]から1年後 のFollow up【Median (range) follow-up: 27.8 (0-39.2) ヶ月】で、Darzalex (daratumumab, Janssen)を加えた併用療法は、VMPに対してHR 0.43(D-VMPの中央値未達)と、長期間に渡り統計的優位差を示しました。移植非適応1st lineの標準治療としてのDarzalexの使用をサポートする試験結果となりました。

また、Phase 2 GRIFFIN試験[1st line移植適応 Darzalex+ VRd]のsafety run-in16人の結果はCR:63%、維持療法を含む4~13 cyclesの期間ではCR:93%となり、治療期間と共に深い奏功が得られ、全患者において投与後の移植が行われました。移植適応 1st line でのDarzalex+ VRdの更なる結果報告が待たれます。

早期奏功を示したNinlaro, Darzalex含む4剤併用

日本でも、近年新たな治療選択肢として加わったNinlaro (ixazomib,武田薬品工業)とDarzalexを含む“Ninlaro+Darzalex+Rd”4剤併用の1st lineにおけるPhase 2 (n=38)の結果は、忍容性も高く、90%以上の患者群で2サイクル以内での奏功が得られ、4剤併用は早期の奏功が期待できる結果となりました。今後、4剤併用によるベネフィットについて更なる情報が待たれます。

ASH最終日(LBA): “移植非適応・未治療における新たな標準治療を示唆”
-Phase 3 MAIA試験 [1st line移植非適応 Rd ± Darzalex]

現在、米国における1st lineの移植非適応の標準治療はRVd, Vd, Rdとなっています(RVd:約40%, Vd:約20%, Rd: 約20% Treatment Architecture U.S. June 2018)。今年のASH最終日のLate Breaking Abstractの演題の一つとして、Phase 3 MAIA試験[1st line移植非適応 Rd ± Darzalex]の結果が発表されました(Rd+Darzalex: Median (range) follow-up: 25.3 (0.1-40.4) ヶ月)。

主要評価項目のmPFSで、Rd+Darzalex(中央値未達) vs Rd (31.9ヶ月) [HR, 0.56]と、Darzalexを含むレジメンが優位な結果を示しました。MRD陰性率でも Rd+Darzalexは24%、Rdは7%となり、Darzalexを含むレジメンがより深い奏功を示す結果となりました。尚、MRD陰性率はCR群からの測定となるので、VGPRの患者群も含むとこの数値はさらに変わることも考えられます。また、MRD陰性患者における両群間のPFSはDarzalexを含むレジメンがさらに優位差を示していたので、Darzalexの深い奏功と長期間における無増悪の効果を示す結果となりました。副作用についても、これまで行われたPOLLUX試験、ALCYONE試験のものと同様で今回の試験で特筆すべき点はありませんでした。本試験の結果を受け、Thierry Facon, MDは、Darzalex+Rdは、1st line 移植非適応における新しい標準治療になると示唆し、会場からはRd以外の併用にも期待が寄せられていました。