【活動報告】:サイニクスが調査協力した「厚生労働省がん政策研究事業 がん登録整備及び活用促進の研究班」の報告書公表。~ 製薬企業におけるがん登録の利用実態はいかに? ~

サイニクス株式会社では、2017年4月より、厚生労働省科学研究費補助金がん対策推進総合研究事業「都道府県がん登録の全国集計データと診療情報等の併用・突合によるがん統計整備及び活用促進の研究」(以下、「がん等統計整備及び利用促進の研究班」とする)/平成29年度、主任研究者:松田 智大、国立がんセンター)にて、分担研究となる「産業界におけるがん登録データ活用の検討」の研究を担当しています。

分担研究の一環として、2017年12月に製薬企業担当者99名(28社)を対象に、製薬業界におけるがん登録およびがん関連統計(以下、がん登録等データ)に対するニーズについて調査しました(平成29年12月調査実施)。これは、国内で初めてとなる製薬企業におけるがん登録に対するニーズ調査となります。

まもなくがん登録データの民間利用がはじまろうとしていますが、日本の産業界におけるがん登録の利用実態は今まで十分に把握できていませんでした。新薬を開発し治療の向上に貢献している製薬企業では、がん登録等のデータに対してどのようなニーズがあるのか、製薬企業99名を対象に調査された結果が、この度、厚生労働省分担研究報告書論文として公表されましたのでご報告します。

まもなく始まる日本でのCAR-T療法

【調査概要】
調査目的:製薬企業におけるがん登録に対する要望の調査・分析
調査対象:日本国内における製薬企業28社、99名
調査方法:ウェブ調査および自己記入式調査
実施時期:平成29年12月上旬

本調査結果は、平成29年度 厚生労働省科学研究費補助金がん対策推進総合研究事業「都道府県がん登録の全国集計データと診療情報等の併用・突合によるがん統計整備及び活用促進の研究」(主任研究者:松田 智大、国立がんセンター)の分担研究「産業界におけるがん登録データ活用の検討」の報告書で発表されています。
分担報告書は、厚生労働科学研究成果データベースの閲覧システム(https://mhlw-grants.niph.go.jp/) をご確認ください。

厚生労働科学研究成果データベース

【調査結果の主要ポイント】
■ がん登録等データを利用している製薬企業担当者は87名(87.9%)であり、利用目的は多い順に、売上予測、開発戦略・企画、市場規模の把握、販売戦略の立案となった。がん登録等データは、製薬企業の幅広い業務において既に利用されている。

■ 利用されているがん登録や関連する統計等は、利用頻度の高い順に、各種論文、「全国がん罹患数・死亡数・有病数将来推計値」、「がんの統計」、「地域がん登録の全国推計」だった。

■ 利用経験の有無に関わらず、がん登録等データの名称や提供内容が正しく認知されていないことがあり、利用にあたっては各種がん登録の特徴や分析手法などを整理する必要性がある。

■ がん登録に対する要望は、より詳細な臨床データ(組織型別やステージ別、がん種の細分化、遺伝子変異やバイオマーカー)や治療に関するデータの公表、また他の臨床データとのリンケージに期待するというものが多かった。
【主任研究者 松田 智大(国立がんセンター)のコメント】
「がん登録等の推進に関する法律」によると、“がん登録等の情報は、民間も含めがんに係る調査研究に活用、その成果を国民に還元する”とあります。まもなく、がん登録の民間利用がスタートします。今まで公表される以外のデータは、民間で利用することができませんでした。製薬企業ががん登録を活用することで、医療現場における治療ニーズをより的確に把握し、新薬の適切な提供に繋がると考えます。」

「今、日本におけるがん登録は変革の岐路に立っており、 “集めるがん登録から、使えるがん登録”に変化していくと思われます。調査結果は、新薬の開発・より的確な提供に繋がるデータの公表、他の臨床データベースなどとのリンケージや共同研究という製薬企業のニーズを、がん登録を担う研究者が認識する貴重な機会となりました。今後の日本におけるがん対策を検討する上で、今回実施した調査は非常に価値のあるものだったと考えます。」

「がん等統計整備及び利用促進の研究班」では、引き続き、がん登録に対する産業界における要望等について調査を行う予定です。今後、調査のご案内が参ります折にはぜひご協力賜れますようお願い申し上げます。