【今回のトピックス】
ASCO annual meeting 2016: Collective Wisdom
今回のOncology Newsletterでは、ASCO前半のセッションより幾つかのトピックスをご紹介いたします。
今年は快晴の下に始まったASCO会場には今回のテーマ、Collective Wisdomを反映した”集合体”をイメージした装飾が施され、例年どおり活気を見せています。 世界中から3万人以上が参加し、5,000以上の最新発表が予定されています。
ASCO セッション前半の所感 : 増える治療選択肢と課題
初日のセッションでは、血液がんにおける免疫療法のこれまで、そしてPD-1/PD-L1、BiTE(Bispecific T Cell Engagers)抗体、CAR-Tに細胞療法を含めた免疫療法治療の「これから」が検討されました。
冒頭の教育セッションでは、blinatumomab (BiTE抗体)が、MRD:微小残存病変を有するPh- ALLで、同種幹細胞移植後の投与で完全寛解を持続した試験結果が示され、またASH 2015での多発性骨髄腫における免疫調節薬(lenalidomide, pomalidomide)との併用で奏効を見せた例などが挙げられ、揚々とした未来が開けているように感じました。
また、近年注目を集めるCAR-Tも、血液がんのみならず固形がんでも開発が進み、CLT019のCLL、ALL、DLBCL以外にも、CART BCMA:メラノーマ、CART Mesothelin:膵臓がん、卵巣がんを対象にした開発についても注目されていました。
今やPD-1/PD-L1阻害剤は基軸となり、そこに対する無数の併用療法の可能性について多くのディスカッションがある中、PD-1阻害剤との併用で期待されるOX40(CD134)のPhase1b試験結果も大変興味深い内容でした。
注目が集まる免疫療法ですが、会場質問の多くは明確なバイオマーカー、最適なコンビネーション、治療シーケンスの特定、そして治療コストといった内容となっておりました。 今年のテーマ”Collective Wisdom”にあるように、今後の新しい知見から目が離せません。
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「全国がん登録」データ活用の今後
「全国がん登録」元年である今年は、データの活用についてフォーカスが向けられ、がん登録事業として最終ステップに入ってきた印象を受けました。
「国民が理解しやすく、がん患者のがんの治療方法の選択に資する形で公表するよう努める」という条文ががん登録等の推進に関する法律にも記されています。患者会が参加する新しい試みもあり、学会の在り方も変わり始めているように感じます。
患者会からは「もっとこういったデータがほしい」という要望が患者や家族の視点から訴えられ、データを集める登録士(実務担当)の方や研究者の方々は興味をもたれて質問をされていたのが印象的です。
新薬の開発は医療の発展でもあります。製薬企業の立場からも、新薬を開発するにあたって必要なデータなどを訴えることも大切であると思います。
今後のがん統計データ公開予定について
- 全国がん登録の初年度である2016年度のデータについての公表時期は、2019年3月が予定されている(データの確定は2018年12月末予定)。
- 地域がん登録によるがんの罹患率推計報告から、全国がん登録に変わることによる 罹患率への影響については、ポスターセッションでも発表されました。
詳細については、現時点では未定の部分が多いようです。サイニクスとしては、今後の進展に注目していきます。 - モニタリング集計2012は既に集計を終えており、今月中にはWebsiteにアップされる予定とのこと
http://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/brochure/monitoring.html - がん診療連携拠点病院における2008年分の生存率集計は7月に公表される予定とのこと
http://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/brochure/hosp_c_reg_surv.html
■ 編集後記 ■
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