第20回目となる日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO)が3月16日から3日間にわたり開催されました。本記事では、参加した弊社サイニクススタッフの注目トピックをお届けします。
DESTINY-Breast04試験アジアサブグループ解析結果の公表
昨年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)のプレナリーセッションでも大きな注目を集めたEnhertu(トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd))ですが、今回のJSMOでも多くの講演がありました。
2日目のPresidential Sessionでは、化学療法既治療のHER2低発現の切除不能かつ/または転移を有する乳がんに対するDESTINY-Breast04試験のアジアサブグループ解析結果が報告されました。試験の結果、主要評価項目であるHR陽性患者におけるPFS中央値はEnhertu投与群が10.9か月、医師選択治療投与群が5.3か月、ハザード比は0.41で、全コホート結果と同じくPFSを有意に改善したことが示されました。
有害事象についても全コホート結果と同じでした。アジアサブグループ(日本人コホート)で見ると薬剤関連性間質性肺炎のGrade1は17.9%、Grade2が8.9%、それ以外のGradeでは認められませんでした。リスクベネフィットを考えるとアジア人においても有効であるとのことでした。
急速な浸透、標準治療となったEnhertu
日本では2020年3月に承認されたEnhertuは、HER2陽性転移性乳がんの3rdラインで約50%(2022年9月調査時点)で使用されており、上市直後から急速な浸透を見せ、標準治療となっています。
Enhertuの使用状況 (日本)
【Data Source】 CancerMPact / キャンサーインパクト (2022年9月調査)
日本の乳がん罹患患者数
日本における乳がん罹患患者数は、約11.8万人(2023年推計値)と、女性の罹患患者数では一番高いがんとなっています。乳がんの全身療法は、ホルモン受容体、遺伝子変異によって大きく4つのサブタイプに分類され、現在Enhertuの対象となるHER2遺伝子変異陽性は、乳がん全体の約15%となります。
乳がんの罹患患者数 (2023年)
【Data Source】 CancerMPact / キャンサーインパクト (2023年3月時点)
より早期、より広い領域へ、Enhertuの開発領域
現在Enhertuは、HER2陽性転移性乳がんで承認されていますが、6月にはDESTINY-Breast03試験の結果に基づき2次治療における現在Enhertuは、HER2陽性再発乳がん、HER2陽性進行・再発胃がんで承認されておりますが、その他にも、非小細胞肺がん、食道がんなど18がん種を対象に多くの臨床試験が進行中となり、今後の展開について注目が集まります。
Enhertuの主な開発領域(試験数)
【Data Source】 CancerMPact / キャンサーインパクト (2023年3月時点)
乳がんHER2低発現におけるHER2阻害剤の開発動向
現在HER2低発現は、乳がん全体の約80%を占めるHER2陰性に分類されており、HER2低発現はその内約60%を占める新しい治療セグメントとなります。早期Phaseでの開発となりますが、乳がん領域では、Enhertu以外にHER2低発現を対象に多くの薬剤の開発が進行中となっています。
乳がんHER2低発現の開発動向
【Data Source】 CancerMPact (2023年3月時点) CancerLandscape ”HER2 Low”セグメント
CancerMPact®とは?
本記事のData Sourceに使用しているCancerMPact®(キャンサーインパクト)では、がん治療対象患者数、治療動向、開発動向、アンメットメディカルニーズ等市場性評価に必須なデータを提供しています。上市戦略、LCM戦略、ライセンシング評価、競合品分析など幅広い目的でご活用頂いております。販売開始から20周年を迎えました。20周年特設ページでは、日頃の感謝を込めて企画した「CancerMPact🄬 20周年 特別セミナー」などをご紹介しています。