アルワールドデータ時代の「今」と「これから」~ 第25回日本薬剤疫学会・第3回日本臨床疫学会より ~

週末の京都では、10月11日~13日の会期で弊社サイニクスも協賛いたしました第25回日本薬剤疫学会学術総会が開催されました。今年は第12回国際薬剤疫学会アジア大会(ACPE)との共同開催で、アジアを中心に様々な国から参加していました。「医療リアルワールドデータ時代における国際連携と薬剤疫学」のテーマのもと、各国のリアルワールドデータを活用した研究や現在の動きについて、国を超えた活発な議論がされた大会でした。また、9月28日~29日には、福岡にて日本臨床疫学会第3回年次学術総会が開催されました。「継往開来~伝統の継承と未来への挑戦」のテーマのもと、現在の医療ビッグデータを活用した疫学研究に関する発表も多く行われました。参加したサイニクススタッフから注目トピックをお届けします。

Topics:
  • データサイエンスと薬剤疫学の「これから
  • 医薬品開発におけるリアルワールドデータ利活用の「今」
  • 伝統的な疫学研究が受け継がれる「これから」

第12回国際薬剤疫学会アジア会議(ACPE)・第25回日本薬剤疫学会学術総会 「医療リアルワールドデータ時代における国際連携と薬剤疫学」

データサイエンスと薬剤疫学の「これから」

リアルワールドデータの種類やその多様性が世界的に成長を見せており、データサイエンスという分野の関心や可能性も高まっている。本大会長である川上先生からは、日本のリアルワールドデータの現状と川上先生が携わられている全国の病院の電子カルテを収集したデータベースの構築について国内外の参加者に向けて紹介された。各医療機関の電子カルテから辞書を作り標準化し、医療機関へ無料でデータを返すことで各医療機関では全国データとの比較ができ(一次利用)、さらにそのデータを疫学研究に活用できる(二次利用)データベースであることが紹介された。また、同様に川上先生が全国の多くの自治体と取り組まれている学校健診・乳幼児健診のデータベース化について日本の健診制度の特徴とともに紹介された。2020年データからどんな赤ちゃんがどんな子供になるか、どんな子供がどんな病気になるかの評価をすすめ、そして次の20年では予防医療や希少疾患の特定にも役立てていきたい、と語られた。

医薬品開発におけるリアルワールドデータ利活用の「今」

治験・臨床研究や医薬品の開発、安全対策等におけるリアルワールドデータ利活用の促進が世界的潮流となりつつある中、各国の主なリアルワールドデータと利活用における規制当局の取り組みが紹介された。アジア諸国では国家的レセプトデータベースが構築されており、日本のNational Databaseをはじめとして、中国のNational claim database、台湾のNational Health Insurance Research Database(NHIRD)、韓国のHealth Insurance Review and Assessment Service (HIRA)等が挙げられた。利活用の事例として、日本の製造販売後データベース調査における電子医療データベース(MID-NET)の活用をはじめ、医薬品の有効性・安全性評価に対する各国の規制当局によるリアルワールドデータ利活用の状況が発表され、当局意思決定におけるリアルワールドデータ利用の促進や関心の高さが伺われた

現在、国内外においてランダム化比較試験(RCT)ベースでの医薬品開発が抱える課題(低コスト化、効率化、迅速化等)に取り組むべく薬剤承認におけるリアルワールドデータの利活用が検討されている。日本ではリアルワールドデータを活用して市販後に有効性と安全性を検証することができる条件付早期承認制度について、医薬品・医療機器での運用が決定し法制化が検討されている。米国では既にリアルワールドデータを用いた承認薬が登場しはじめている。Blinatumomab(アステラス・アムジェン・バイオファーマ)の急性リンパ性白血病(ALL)に対する承認申請でのリアルワールドデータの利用等が事例として紹介された。今後のリアルワールドデータを活用した各国の薬剤開発動向に注目したい。

日本臨床疫学会第3回学術総会「継往開来~伝統の継承と未来への挑戦」

2016年に発足して3回目となる今回の学術総会では500人を超える参加者で大変盛況に行われました。日本臨床疫学会ではビッグデータを活用した研究の推進と研究人材育成も推進しており、毎年、若手研究者による発表も活発に行われています

伝統的な疫学研究が受け継がれる「これから」

本大会長である九州大学の二宮利治先生からは、今、データサイエンスの分野が注目され、人の健康維持や疾病の治療の貢献だけでなく、国家・地域の施策の決定にも大きな影響を持つことが期待されているが、データサイエンス分野の発展には伝統的な疫学的視点と新しい手法や技術を有する人材の育成が重要であると語られた。二宮先生は1961年から約60年続く「久山町研究」の5代目教授を務められている。久山町研究は日本と同じような人口分布になっている福岡県久山町の住民を対象とした長期間に渡る精度の高い追跡調査で、脳卒中から始まり、高血圧や糖尿病などの生活習慣病、現在は認知症の研究にも力を入れている。データを住民にどう返すかも疫学研究では大切なことであり、近年では将来の生活習慣病リスクをスマートフォンで住民に返すなど、最新ICTの活用も進んでいる。調査を継続することで生まれる価値があり、伝統的な疫学研究をやり続ける覚悟を持って未来に向けて発展させていきたいと熱く語られた