【今回のトピックス】
日本臨床疫学会 発足記念講演会
- 次世代リーダーによる臨床研究
- ビッグデータを活用した臨床研究の現状と展望
- 日本臨床疫学会のミッションと概要
昨年12月18日(日)、東京大学弥生講堂にて、日本臨床疫学会の発足記念講演会が開催されました。 日本臨床疫学会は、「クリニカル・マインドとリサーチ・マインドを持つ医療者による質の高い研究を、 ビッグデータを活用した研究などの新興と研究人材育成を通じて推進し、現在の医療が直面する諸課題の 解決に貢献する」をミッションとして、昨年発足したばかりの学会です。
2000年に開設されたばかりの弥生講堂は後方に立ち並ぶほどの参加者数であふれておりました(かなりの参加申し込みをお断りをされたとか・・・・)
疫学研究のリサーチを行っている弊社としても、フレッシュで活気のある本学会の今後に注目していきたいと思います。
簡単ではございますが、本講演会の報告をさせて頂きます。
1. 次世代リーダーによる臨床研究
まず、若手の先生方による「新生児」「救急・集中治療」「関節リウマチ」「腎疾患」「循環器」でそれぞれのデータベース研究の講演がありました。
中でも、「新生児データベースの研究」では、新生児における疾病は全てが希少で状況も様々であり、適切な対応を都度行うためにも現場の経験に頼るだけではなく、データの蓄積を行い、データを基に治療を検討する必要があるという説明が非常に印象的でした。また、新生児と産科では現状データベースが別々であるため、連携に向けての検討が進められているとのことです。
また、「関節リウマチデータベース研究」では、先日の第22回日本薬剤疫学会学術総会でも講演があった関節リウマチの大規模コホート研究であるIORRAについて、「腎疾患データベース研究」では、レセプトデータを活用したCKD診療の質の評価について講演されました。
2. ビッグデータを活用した臨床研究の現状と展望
第22回日本薬剤疫学会学術総会でも講演があった、ライフコースとリアルワールドデータを活用した臨床研究に加えて、「Big Data時代における臨床データベースの活用」というテーマで、外科系医療の現状を把握するためのデータベースNational Clinical Database(NCD)が紹介されました。わが国で一般外科医が行っている手術の95%以上をカバーする年間120数万件が入力される巨大DBです。実態に基づきながら医療を考えていく時代にきており、疫学エキスパートと現場医師の連携で治療が支えられていくと語られました。
また、国民の基本的な保健医療データを統合した情報基盤「PeOPLe(ピープル)」についても触れられ、患者の視点からもどうデータを積み上げていくかが大事である、とのことでした。
これらのビッグデータにより、Evidenceのない手探りでの治療から治療効果(必要な治療の選択)と費用削減(必要な費用)が期待されます。
3. 日本臨床疫学会のミッションと概要
人口構成の変化もあり医療目標は、「治す」から「予防と緩和」へ変わってきています。
新しい医療には新しい医学が必要であり、そのような中、誕生したばかりの日本臨床疫学会は「何をするのか?」が代表理事である福原先生から挙げられました。
- 学術研究を切磋琢磨する「場」を提供する
- 臨床疫学研究の成果を切磋琢磨し・褒め合う
- 若手研究者がのびのびと発信する
- 他の学会とボーダーレス
- 企業・行政・国民とコミュニケートする
- データベース研究の作法を提供する
ここに挙げられた通り、本学会は若手を中心としてとても活気がある印象を受けました。
今年は早速、第1回年次学術大会が行われるとのこと。
私どもサイニクスもどのような大会になるか楽しみにしています。
「第1回年次学術大会」
日時:2017年9月30日(土)~10月1日(日)
場所:東京
大会長:康永 秀生先生(東京大学)
大会テーマ:「日本の臨床疫学-天地開闢」
※詳細は日本臨床疫学会ホームページをご参照ください。
■ 編集後記 ■
京都大学の川上先生のご講演の中で「今や臨床現場の疑問に答えるのが「疫学」。新しい「疫学」である」というコメントがありました。 時代のニーズに合うデータをご提供するためにも本学会の今後の動向や各先生方が取り組まれているデータベースや研究結果から目が離せません。なりました。