新たな治療セグメント 「HER2低発現」~第60回日本癌治療学会学術集会(JSCO)より~

第60回日本癌治療学会学術集会(JSCO)が、2022年10月20日(木)から3日間、神戸で開催されました。本記事では、参加した弊社サイニクス オンコロジー・ビジネスユニットチームのスタッフが注目するトピックをお届けします。 

なお、弊社サイニクスが日本国内で独占的に販売・サポートしているオンコロジー総合データベース「CancerMPact🄬」(キャンサーインパクト)の販売開始から20周年という節目に当たり、がん治療のますますの発展を微力ながら応援させていただきたくこの度の『第60回日本癌治療学会学術集会』に協賛をさせていただきました。

乳がんに新たな治療セグメント「HER2低発現」

今年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)のプレナリーセッションでも大きな注目を集めたEnhertu(トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd))は、PFS(無増悪生存期間)、全生存期間(OS)を有意に改善することが第3相DESTINY-Breast04試験にて示されました。今回のJSCOでも引き続きHER2陽性乳がんに関する多くの講演がありました。

急速な浸透、標準治療となったEnhertu

日本では2020年3月に承認されたEnhertuは、HER2陽性転移性乳がんの3rdラインで約30%(2021年9月調査時点)で使用されており、上市直後から急速な浸透を見せ、標準治療となっています。現在Enhertuは、3次治療以降での承認となっておりますが、DESTINY-Breast03試験結果の基づき2次治療を対象とした申請が行われており、10月末の厚労省の薬食審・医薬品第二部会にて、「標準的な治療が困難な場合に限る」の制限が解除される予定です。

Enhertuの使用状況 (日本)
【Data Source】 CancerMPact / キャンサーインパクト (2021年11月調査)

サイニクス がん オンコロジー キャンサーインパクト 乳がん JSCO 第60回日本癌治療学会学術集会

日本の乳がん罹患患者数

日本における乳がん罹患患者数は、約9.5万人(2022年推計値)と、女性の罹患患者数では一番高いがんとなっています。乳がんの全身療法は、ホルモン受容体、遺伝子変異によって大きく4つのサブタイプに分類され、現在Enhertuの対象となるHER2遺伝子変異陽性は、乳がん全体の約20%となります。

乳がんの罹患患者数 (2022年)
【Data Source】 CancerMPac / キャンサーインパクト (2022年10月時点)

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より早期、より広い領域へ、Enhertuの開発領域

現在Enhertuは、HER2陽性転移性乳がんで承認されていますが、6月にはDESTINY-Breast03試験の結果に基づき2次治療におけるHER2低発現の追加申請を発表しています。そしてEnhertuは乳がん領域だけでなく、非小細胞肺がん、胃がんなど18がん種を対象に多くの臨床試験が進行中となり、今後の展開について注目が集まります。

Enhertuの主な開発領域(試験数)
【Data Source】 CancerMPact / キャンサーインパクト (2022年10月時点)

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乳がんHER2低発現におけるHER2阻害剤の開発動向

現在HER2低発現は、乳がん全体の約80%を占めるHER2陰性に分類されており、HER2低発現はその内約60%を占める新しい治療セグメントとなります。早期Phaseでの開発となりますが、乳がん領域では、Enhertu以外にHER2低発現を対象に多くの薬剤の開発が進行中となっています。

乳がんHER2低発現の開発動向
【Data Source】 CancerMPact / キャンサーインパクト (2022年10月時点)

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CancerMPact®とは?

本記事のData Sourceに使用しているCancerMPact®(キャンサーインパクト)では、がん治療対象患者数、治療動向、開発動向、アンメットメディカルニーズ等市場性評価に必須なデータを提供しています。上市戦略、LCM戦略、ライセンシング評価、競合品分析など幅広い目的でご活用頂いております。販売開始から20周年を迎えました。20周年特設ページでは、日頃の感謝を込めて企画した「CancerMPact🄬 20周年 特別セミナー」などをご紹介しています。